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ヒンドゥー教はなぜ牛を食べないのか。インド国内では牛肉を所持する事さえ禁止される州もある程で、ヒンドゥー教の禁忌(タブー)である牛の話を今から順を追って説明します …
ヒンドゥー教の特集はこちらの目次よりどうぞ。↓
ヒンドゥー教では牛は食べません。
この感覚を日本人でも理解するためによく使われる「あなたは犬を食べますか?」と言う質問は聞いてゾッとします。中国では犬食文化がありますが日本では考えられません。まさに同じ感覚が牛にはあるのです。今日はヒンドゥー教の牛についてフォーカスしてゆきます。
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ヒンドゥー教とは
ヒンドゥー教はインドで発祥した世界最大(11億人)の民族宗教です。
開祖は定まっておらず、仏教と同じバラモン教から派生した多神教で、インド国内の約8割がヒンドゥー教を信仰しています。特徴的なのはカースト制で、ヴァルナ(Varna)やジャーティ(Jati)と呼ばれ身分や職業によって自分の地位が信仰生活の中に溶け込んでいます。
また、ヒンドゥー教では不殺生を教義とするため多くが菜食主義(ベジタリアン)です。カーストによっても度合いが違うようで、インドの40%を菜食主義が占めています。カーストの上位階層が菜食主義が多いため、模倣する食文化が伝統として続いています。牛に限らず食肉を避けています。
ヒンドゥー教は牛を食べない
菜食主義でない人でもヒンドゥー教では牛を食べません。
そもそもインドでは牛を食べる文化(習慣)がありませんでした。牛は食べるよりも一家を養うため恵みを与え続けてくれる非常に貴重な存在で、牛を食べる事はその恵みの元を断つ行為となり愚かな事だと禁じられていたのが始まりです。
本来は先人の叡智とも言える合理的な判断でしたが、時代と共に宗教的な意味合いへ変化してきたと言われています。
なぜ牛を食べないのか
ヒンドゥー教には聖牛崇拝があります。
ヒンドゥー教の神話には牛が登場する場合が多く、聖なる牛として神聖視され崇拝対象となっています。驚くのは牛の糞さえも儀礼的に燃やしたりして、宗教的な利用をする場合があります。ヒンドゥー教では牛の糞は聖なる存在で、浄化作用を持つと信仰されています。
実際に、インドの伝統的医学アーユルヴェーダ現代でも洗顔料や歯磨剤、石鹸などの原料に牛の糞を用いたりします。他にも牛の糞を焼いた灰は護符として魔除けにも使われることもあります。
また、ヒンドゥー教の輪廻は上下で87段階あり、最上段の人間に輪廻する1つ前段階が牛であり、牛を殺した者は輪廻の最下段からやり直さなくてはならないという教えさえあります。他にも、牛には3億3千万の神々が宿るとヒンズー教では言われています。
インドの牛肉は輸出量が世界一
ヒンドゥー教は牛の肉を食べません。
なのに、なぜ牛肉の輸出量が世界一なのでしょうか。それは、牛の種類によっても扱い方に違いがあり、ヒンドゥー教が牛を食べない牛は瘤牛(コブウシ)で、水牛は悪魔マヒシャの化身と呼ばれ、家畜として使役し牛肉として輸出(水牛含め168トン)しています。
その理由は、インドの牛の飼育頭数はブラジルに次いで多く、1億8900万頭もいます。そのため、牛乳の生産量はアメリカ合衆国に次いで世界2位、そしてバターの生産量は世界最大を誇ります。 インドでは、水牛からも搾乳します。インドの水牛の飼育頭数は1億940万頭。これは世界最大です。水牛は搾乳できなくなると、食肉として解体されます。
簡単に言えば、インドはヒンドゥー教でない2割の人口でも約2〜3億人もいます。軽く日本の人口を超えています。実は牛も多く、インド国内には牛肉マーケットも案外とあるのです。
ヒンドゥー教の食事
インドでは約8割がヒンドゥー教だと言われ、インドの4割が菜食主義だと言われています。
簡単に言えば、ヒンドゥー教の食事は肉を食べる人だっていると言う事です。基本的に牛を食べる文化がないので鳥や羊、豚などの肉を始め、魚などを食べています。
ヒンドゥー教は、浄と不浄といった穢れに対する意識が強く、 他者から唾液によって穢れが感染すると考えられています。外食の場合、同じ調理器具で肉を調理した可能性があるため、ヒンドゥー教では家庭で食事することが一般的です。
また牛や肉食のように飲酒は禁じられていると言う訳ではありませんが、悪弊として比較的忌避されます。酔っ払って判断力が鈍ると何を食事しているのかわからなくなってしまうからと言われています。
ヒンドゥー教が肉の代わりに食べる加工食材
ヒンドゥー教が肉の代わりに食事に出る加工食材があります。
代表的なものは大豆ミートと呼ばれ、その名前のとおり大豆が原料の、食感を肉に似せた加工食品です。大豆は「畑のお肉」と呼ばれるように、低脂肪・低カロリー・高たんぱくで、栄養面でもお肉に引けを取らない食材のひとつです。乾燥した大豆ミートをお湯で戻すとお肉のような食感になります。
他にはグルテンミートでしょう。グルテンミートは、小麦粉に含まれるグルテンに味付けをして肉の代用品として加工した食品です。大豆ミートと比べてグルテンミートは柔らかく、お年寄りや子供でも食べやすいのが特徴です。グルテンミートは主にタンパク質で構成されていることから、栄養価的にも肉に近い食材といえます。フライにしたり炒めたり、肉の代わりに使用する調理方法でOKです。
ヒンドゥー教にとっての豚
実はヒンドゥー教では牛ではない肉を食べる場合でも、鳥や羊の肉を好んで食べます。
その理由はイスラム教のように宗教的な理由ではなく、良識に従って豚を食べないようです。豚は雑食で、食べ物が無ければゴミでも食べようとします。インドでは豚を見かけても衛生的な飼育管理が未だに定着してないようで、信用できる店でないと豚を食べたくないという理由で嫌っている人が多いようです。
ヒンドゥー教ではありませんが、共通した豚を食べないイスラム教の事情はこちらの記事で解説しています。↓
牛の他にヒンドゥー教が食べないもの
カーストによって食事の禁止事項が異なる場合もありますが、一般的にヒンドゥー教で禁止されている食事は、肉全般、牛、豚、魚介類全般、卵、生もの、五葷(ごくん:ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)です。
まとめ
ヒンドゥー教が牛を食べない本当の理由は食べる文化(習慣)が無いからです。
歴史と共に、宗教的な意味合いはその上に便乗したと言っても過言ではありません。まさに、日本人が犬を食べない気持ちと似ているのかもしれません。ヒンドゥー教のタブーとして、しっかり押さえておきましょう。
次のヒンドゥー教特集はこちらからどうぞ。↓
あとがき
ヒンドゥー教は本当に牛を大切にします。
過去に牛を解体したとされる人々が自警団に殺害される事件が起こったり、インドの多くの州が牛の食肉処理や牛肉の所持すらも禁止しており、中には終身刑を言い渡す州もあるようです。
参考図書;ヒンドゥー教の〈人間学〉 (講談社選書メチエ)著;マドレーヌ・ビアルドー、翻訳;七海 由美子
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