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アニミズムとは何か。日本が昔から昔から信仰してきた事例と意味を解説しています。また、大人と違う幼児のアニミズムには特徴があったのです …
アニミズムは、汎心論、汎神論、自然崇拝など様々な言葉で言い換える事が出来ます。
日本では八百万の神とも呼ばれ、現代でも根強い信仰として日本人の心に定着しています。
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アニミズムとは
アニミズムとはあらゆる自然物に霊的存在を認め、それらを信仰する事です。
後ほどアニミズムの例を紹介しますが、挙げればキリがありません。一般的には自然物の霊的存在を信仰したり、人間や死者に生き霊や死霊のあることを認め、様々な儀礼を行う信仰を文化人類学(比較民俗学)や宗教学でアニミズム(animism)と呼んでいます。
アニミズムという言葉や概念を生み出したイギリス人類学者E・B・タイラーによれば、これは全ての事物には霊的存在があるという原初的信仰であると考え、これを持って宗教の起源とみなしています。アニミズムを簡単に説明するならば、あらゆる事物には「生命」が存在するという事です。
アニミズムの問題
タイラーは、アニミズム論の中には2つの問題を抱えていると自著(原始文化2巻)の中で説明しています。
1つは、霊的存在の概念はいかにして発想されたのか。2つ目は、いったん形成された霊的存在は、その後どのような進化の過程を経て宗教的発展をしたのか。現在でも未だに解明はされていません。
アニミズムの意味
アニミズムの意味はラテン語(anima)から派生したと言われています。
本来の意味は、気息・霊魂・生命などの意味を持っています。タイラーの原始文化を訳した比屋根安定は「アニミズムとは、もともと語根をアニマ(生気)とする英語アニマル(動物)、アニメート(生きている)、アニメーション(活気)から来ている」として、生気説と訳した事でも有名です。
日本語では精霊信仰、地霊信仰、汎霊説とも呼ばれたりしています。アニミズムを信仰する代表的な民族は日本人以外にもアメリカの先住民(インディアン)やオーストラリアのアボリジニなどが自然崇拝を通してアニミズムを信仰しています。現存する民族の中でも日本は最大のアニミズム国家と言っても過言ではないでしょう。
アニミズムの考え方
アニミズムは原始的な考え方と言われています。
生者の考え方や生き方を死者の世界に適用して、資料とその種類およびその生活まで組み立ててゆくのです。そして、植物や動物、樹木・石などにまで霊の存在を人は信じるようになります。
「自然の生命化・自然の霊化」というアニミズムの考え方が信仰されれば様々な心霊、例えば動植物崇拝にもとづくトーテミズムや、最高神や唯一神といった宗教へと人々の信仰が発達してきたと言われています。
アニミズムは日本古来の信仰
アニミズムは日本古来から続く信仰の1つです。
例えば、アイヌの霊的世界はアニミズムと大きな関係があります。棲息する天地、休息する家、使用する器具、どれを取っても一々神だと言われています。猟に出ては山の林へ祈り、枝川の水神に祈り、狩の神に祈り、沖へ出て風に遭っては祈り、雨に叩かれては祈り、波に脅かされては祈ります。
アイヌは神(霊的存在)を祀る場合に必ず酒を用います。アイヌは酒好きだから神もまた酒好きだと、こういったアニミズムの例は枚挙に遑がありません。
アニミズムの例
日本で実際にあったアニミズムの例を5つ紹介します。
魚霊・針霊、聖なる樹木、磐座(いわくら)、ビジュル石、境界石が有名です。
魚霊・針霊
川の漁業組合は釣りの口開け(開禁日)前に魚霊碑を建立して、これまで釣り上げられた魚の霊を弔う儀礼を行ったりします。
生物だけでなく、毎年行われる針供養、あるいは茶道関係者で行われる茶筅(ちゃせん)供養もアニミズムと言っても良いでしょう。針供養は、針に生命があると信じ、その霊的存在に対する慰撫の儀礼だと言われています。
一般的に2月8日の事始めの日に行われ、地域によって針供養の日は異なります。山口県萩では古針を海に流したり、石川県では針千本と呼ばれウニを針の神として祀ったりしています。
聖なる樹木
神木は心霊の依り代として、展開と地上とを結ぶ宇宙樹として、神霊の降臨によって常在神の留まる所となっています。
琉球文化における聖なる杜(御嶽)の中の、中心地は男性禁忌の空間と言われ、そこではクバの樹と呼ばれる宇宙樹が神聖視されています。福井県若狭湾に面する大島のニソの社信仰は、よく知られた神木信仰の例でしょう。この地の旧家では、ニソの社にある椎・椿などの老樹にニソの神が宿っていると信じられています。
そして、現代アニミズムとして生活に根付いているのは正月の門松です。門松は歳神の依り代で、榊(さかき)として用いられる樹木などは、いずれも常緑樹です。京都の上賀茂神社で毎年行われる神事も賀茂山の宇宙樹としての神木(ミアレ木)を中心に行います。
磐座(いわくら)
神社などで、ある特殊な形の石にしめ縄が張られている場合がありアニミズムに関係します。
これは、神々の依り代として崇拝され、磐座信仰と呼ばれています。岩石に霊的存在を認めこれを御神体として信仰する神社は日本全国にあり、有名なのは和歌山県新宮にある神倉神社です。巨大岩石を御神体とし、ゴトビキ岩と呼ばれる巨岩がこの神社の磐座ですが、ここは熊野の神の降臨の地と呼ばれ、考古学的に見ても祭場としての性格があるようです。
アニミズムでも民族信仰として石神と呼ばれる信仰も同じく、石そのものを御神体、霊的存在としてみるアニミズムです。病気治しや、そのほかの後利益を願うものも多く、神霊の御座石として聖地を形成したり、伝承によって海からの神の寄り石としてアニミズムの1つとなっています。
奄美大島から南の琉球文化圏では道の突き当たり(T字路)、には石敢当(いしがんとう)と刻んだ石を立て悪霊の侵入を防ぐのが習慣になっています。
ビジュル石
日本の最南端である八重山にはビジュル石というアニミズムがあります。
ビジュルは田の真ん中や端に立てられ、田植えが終わると牛骨の汁あるいは犠牲として殺された鶏の煮汁が供えられ、田植儀礼に参加した男性はその煮汁を食べます。その後、供物となった骨などを田の中に埋めるか、投げ入れます。稲作と聖なる石といったアニミズムは八重山古文化層に広く存在したと言われています。
境界石
海の彼方、ニーランまたはニールと呼ばれる異界とこの世としての自界との境界に置かれるニール石もアニミズムの1つです。
一般手に境界石とも呼ばれ、海の彼方からユー(世)と呼ばれる豊穣の霊力を迎えるための儀礼を行う境界石で、その祭場的性格は磐境(いわさか)の霊場的性格と共通するとも言われています。
アニミズムと幼児(子ども)
アニミズムは幼児(子ども)の成長過程にも見られます。
典型的なものとして、生命のないもの(玩具や車など)に生命や意思があると考える心理作用のことです。3歳から6歳までの発達段階に多く現れ、例えば人形遊びが好きな幼児はアニミズムだという可能性が高いかもしれません。
スイスの心理学者ピアジェによると、この現象について、未成熟な子どもは心の中の出来事と外界の出来事とが区別できていないことに要因があると言われています。ピアジェが提唱した幼児期アニミズムの発達4段階を紹介しておきます。
- すべての物は意識的である
- 動くことのできる事物が意識的である
- 自分の責任で動くことができる事物が意識的である
- 意識は動物に局限される
まとめ
タイラーのアニミズム論は私たちの信仰の土台と言っても良いのかもしれません。
日本人の宗教文化は神道・仏教・民族信仰などが多様な接触・融合の過程を繰り返して生み出された習合宗教と言っても過言ではないのですから。
あとがき
幼児(子ども)のアニミズムは可能性があります。
アニメなどファンタジーだけの世界観が幼児にとっては現実の世界観となっています。もし仮に子どもと大人の境界線があり、アニミズムの世界が信仰だけでなく実在するならば、子どもにしか見えない、子どもにしか感じる事ができない、のかもしれませんね。
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